脳の大脳基底核から大脳皮質の神経ルートにおいて起る障害で、運動減少、運動過多の症状が出現する運動系の症状です
ドーパミンD2受容体(抑制性に働く)の過度の遮断により起こると考えられています。
・運動減少症状(筋緊張亢進):筋肉の固縮、無動。
・運動過多症状(筋緊張低下):振戦、舞踏運動、
片側バリズム、
アテトーゼ、
ジストニアなど。
錐体外路は、大脳皮質より骨格筋(手足の骨格に接着する随意性の筋組織)の緊張と運動を不随的に支配しており、錐体路は、大脳皮質より随意的に支配しています。
錐体路と錐体外路が協調して働くことにより随意運動が可能となりますが、錐体外路が障害される事により不随性運動が起り随意運動にも影響をおよぼします。
近年、パーキンソン病における症状で、動作緩慢は眼球運動系にも認められており、大脳皮質―大脳基底核ループの障害による事が判明しました。また、固縮の緊張亢進があり不随意運動としての運動亢進を伴うことが多く、上記の二群に大別できない場合があります。
錐体外路と骨格筋
錐体外路は、大脳皮質 ⇒ 大脳基底核 ⇒ 小脳、脳幹(赤核,網様体)⇒ 脊髄の前角に運動神経細胞体に投射(伝達物質はアセチルコリン)を行い骨格筋を動作させています。(錐体外路の最重要な機能は姿勢制御)また、骨格筋の内部にレセプターがあり状態を中枢へ伝えています。このレセプターには筋紡錘と腱紡錘とがあり、両者とも伸展されることで活性化され活動電位を脊髄・大脳皮質に伝えています。
骨格筋は、安静時(非収縮時)には静止膜電位が観察され、
活動時(収縮時)には活動電位が生じています。
神経細胞と同様、静止膜電位は、細胞内(細胞膜の内側)が陰性であり、活動電位は、細胞内が陽性である。
収縮時に生じる活動電位により、細胞内小器官である筋小胞体の中のカルシウムイオンが筋線維内へ流入し、アクチンとミオシン分子間に電気的作用が生じる。この作用によりアクチンがミオシンの間に滑り込み、筋線維の長さが短縮します
錐体外路症状の種類・
固縮:歯車様固縮と鉛管様固縮に分類される。
歯車様固縮は、関節屈伸運動時にガタガタとした断続的な
抵抗を感じるもので、パーキンソン病に特徴的な固縮で
ある。鉛管様固縮は、抵抗を感じるもので、非特異的な
固縮である。
・
無動:動作が少なくなり、動作が緩慢となり、進行すると
動けなくなる。この動作の減少を寡動、動作の緩慢を動作
緩慢、動作の欠如を無動と呼ぶ。
パーキンソン病でみられる仮面様顔貌、すくみ足、瞬きの
減少などは無動によるものと考えられる。
・
振戦:静止時振戦、姿勢時振戦、運動時振戦に分類される
パーキンソン病では静止時振戦が特徴的で、通常、片側
の上肢に発症、次に同側下肢、後に対側の上肢、下肢へ
とみられるようになる。
・
舞踏運動:顔をしかめたり、首を回旋させたり、手足を
伸展・屈曲・開閉・回旋させたりする。
・
片側バリズム:振幅が大きい素早い運動。上肢または下肢
を投げ出すような激しい動きでパターンは一定。
視床下核や、視床下核に投射する神経線維連絡の障害に
より、視床から大脳皮質への出力が異常に増大して出現
すると考えられている。脳血管障害が原因として多いが、
高血糖でも生じる。
・
アテトーゼ:顔面・頸部にみられる持続の長い運動で、
異常肢位がゆっくり捻れながら変化していくような動きで
ある。原因としては、周産期異常による脳性麻痺が多い。
アテトーゼのみを呈することは稀で あり、舞踏運動、
ジストニア、痙縮などを伴う場合が多い。
・
ジストニア:持続的な筋収縮により異常姿勢や局所
(上肢・下肢等)の運動障害を来たす。
特徴として、主動筋と拮抗筋が同時に収縮する共収縮、
姿勢異常や運動障害が一定のパターンをとる常同性、
特定の感覚入力によって症状が改善する感覚トリック、
ある特定の動作のみが障害される動作 特異性、起床時に
症状が軽い早朝効果、などがある。